万全の準備を整え、あとは天気と体調を祈るだけ──そんな気持ちで迎えた富士登山の前日。しかし、台風の影響で空は厚い雲に覆われていました。「本当に登れるのかな」と不安が募る中、ひと晩を過ごしました。
ところが翌朝、窓の外をのぞくと、空はすっかり明るくなっていました。天気の心配はいつの間にか消え、「いよいよ始まるんだ」と、気持ちが自然と前向きになっていくのを感じました。
富士宮駅から登山口へ〜登山開始まで
この日はツアーに参加しての富士登山。朝、富士宮駅に集合し、そこからはバスで登山口を目指しました。途中、立ち寄った温泉施設では、登山ウェアに着替えたり、荷物の最終チェックをしたりと、しっかり準備の時間がとれました。
ここで用意していただいたお弁当を食べ、不要な荷物は預けることができたので、身軽な状態で登山にのぞむことができたのもありがたかったです。
食後には施設内で歯磨きも済ませました。登山中は水の使用が限られることもあり、こうしたタイミングで口の中をスッキリさせておくと、気持ちよくスタートできます。こうした小さな準備も、後になって「やっておいてよかった」と感じるひとつでした。
いよいよバスに乗って富士宮口五合目へ。窓の外に広がる景色が徐々に山らしくなり、気持ちも「登山モード」に切り替わっていきます。
五合目の登山口に到着後は、高所順応のために1時間ほど滞在。ここでガイドさんから、登山の注意事項や装備の確認がありました。特に、レインウェアについては「100均などで購入した簡易的なものを使っている場合は、しっかりと申告して、登山用レンタルしたほうがいい」とのアドバイスがありました。高山では天候が急変することもあるので、しっかりした装備が求められます。
また、ガイドさんは登山中のペース配分や高山病の予防についても話してくれました。初心者にとっては非常に助かるアドバイスで、装備や心構えが整ったことで、安心して登り始めることができました。
準備が整い、いよいよ登山のスタートです。山の天気は変わりやすく、麓では晴れていたのに、登り始めるころは、小雨がぱらつくお天気でした。でも、「さあ、行こう」と気持ちを新たにして、第一歩を踏み出しました。
登山開始〜山小屋到着まで
いよいよ登山開始。登山口を出発すると、最初から山道が続き、足元が不安定で歩きづらく、思っていたよりもペースが上がらない自分に少し焦りを感じました。しかし、ガイドさんが常に様子を見ながら休憩を適宜とってくれたおかげで、無理なく進んでいけました。
途中、少し雨がパラつき始めたときも、ガイドさんがレインウェアを着るタイミングをしっかりと見計らってくれました。こうした細かな配慮が本当にありがたく、登山中の不安を感じずに安心して進めました。
また、ペースが異なる参加者がいる中で、ガイドさんは全員が山小屋までたどり着けるよう、細やかな配慮をしてくれました。途中で遅れがちな人を気にかけ、少し待ってから再出発したり、他の参加者とペースを調整したりして、全員が無理なく進むことができるようサポートしてくれました。そのおかげで、みんなが楽しみながら登ることができたのが本当にありがたかったです。
休憩時には、周囲の美しい景色を眺めたり、ガイドさんから登山の知識やアドバイスを受けたりすることができ、少し疲れた体も癒されました。山小屋に向かう道のりは想像以上に長く感じましたが、ガイドさんの励ましの言葉に力をもらい、少しずつ前に進んでいきました。
山小屋泊〜休息と準備
9合目の万年雪山荘に到着したとき、思った以上に体力が消耗しているのを感じました。山小屋の中はリラックスするための空間というより、登山後に必要な最低限の休息を取る場所です。個室を予約していたものの、実際にはカーテンで仕切られただけの空間なので、隣の登山者の気配や音が気になり、完全に自分だけの空間というわけにはいきませんでした。それでも、少しでもプライバシーが保たれる場所はありがたかったです。
食事はカレーライスで、登山後のお腹にしっかりと染み渡ります。温かいお茶も提供され、体を内側から温めてくれました。シンプルながらも、体力を回復させるためにとても大切な食事でした。
その後、部屋に戻って少し休憩。山小屋の中は静かではなく、他の登山者たちの動きや話し声が聞こえるため、完全にリラックスできるというわけではありませんでした。それでも、登山の疲れがあったので、うつらうつらと眠ることができ、多少は体力を回復できたと感じました。ぐっすり寝ることはできませんでしたが、少しでも休めたことで、翌日の登山に向けた準備ができたように思います。
ガイドさんからは、翌日のご来光を目指して2時に出発するとのこと。ご来光のためには早起きが必要なので、予定よりも早めに寝床に入りました。しかし、周囲の気配が気になり、寝入るのは少し遅くなりました。それでも、体力を回復させるためにしっかりと休養し、翌日に備えて気持ちを整えました。
ご来光を目指して登る
夜中の2時過ぎ、ヘッドライトをつけて登山を再開しました。前日の疲れが残っていて、足は重たかったですが、歩き出すうちに少しずつ体が慣れてきました。
外は冷えていて、空気が肌にひんやりと感じられます。あたりは真っ暗で、見えるのは自分たちのヘッドライトの光だけ。その光がぽつぽつと山道を照らしていて、静かな夜の中をただ黙々と歩き続けました。
富士宮ルートは山頂から剣が峰までの距離が近いため、少し歩くとすぐに富士山の最高地点、剣が峰に到着しました。ここでは多くの登山者が順番に写真を撮り合い、和やかな雰囲気でにぎわっていました。
写真を撮り終えたあと、少し場所を移して、ご来光を待ちました。空がゆっくりと明るくなっていくにつれて、まわりも自然と静かになり、登山者たちの視線が一斉に東の空へ向かいます。
やがて、雲の向こうから太陽が少しずつ顔を出し、山の稜線や空がじんわりと赤く染まりはじめました。途中、何度も「もう無理かもしれない」と感じることがありましたが、「ここまで来てよかったな」と、心の中でしみじみと感じました。
大変な下山と感動の逆さ富士
山頂付近を少し散策して周りを見渡すと、眼下に美しい逆さ富士が薄い雲の上に映っているのが目に入りました。その光景はまるで絵のようで、思わず立ち止まってじっと見つめてしまいました。麓の街並みと、雄大な富士山の影が一緒に広がっていて、思わず「これが富士山なんだな」と実感させられました。
あとはひたすら下山。下りは登りと違って、足がどんどん重く感じられます。足元に気をつけながら進むものの、少しずつ疲れが溜まってきて、足取りがだんだんと重くなっていきました。
途中、ガイドさんに「全然、ゴールが近寄らない!」と泣き言を言ってしまいました。あまりにも疲れていて、登山口が見えてこないことに焦りと不安が募っていたんです。でも、ガイドさんは優しく励ましてくれて、少しだけ心が軽くなった気がしました。
そして、ついに登山口に到着!疲れが一気に押し寄せると同時に、「やりきった」という達成感が込み上げてきました。あの厳しい登りと、長い下山を乗り越えて、無事にここまでたどり着いたことにホッとしました。
帰り道、行きに立ち寄った温泉施設に再度寄り、汗を流しました。暖かいお湯に浸かると、登山の疲れが一気にほぐれていくのを感じ、身体も心もリフレッシュできました。温泉を出た後は、すっきりとした気分でバスに乗り込み、帰路につきました。
まとめ 〜登ってみて感じたこと〜
富士登山は、厳しい場面もありましたが、それ以上に得られたものが大きかったです。途中、何度かくじけそうでしたが、山頂での景色やご来光、逆さ富士などの美しい瞬間が心に残りました。達成感と自然の魅力を実感できた、思い出深い登山でした。
子育てもひと段落し、自分のために時間を使えるようになった今、思い切って挑戦して本当によかったです。これから富士山に登ってみたいと思っている同世代の方にとって、この体験が少しでも参考になれば嬉しいです。どうか、安全第一で、無理せず、素敵な富士登山になりますように。
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